ハリーへ 1

ハリーへ
君が我が家にやって来たのは8年前の春でした。猫のレオと、ひなとの共同生活に満足していたお母ちゃんは、犬を飼うことには消極的でした。毎日の散歩や、家を留守にしにくいなど、猫よりも重責だと考えていたからです。が、何よりお父ちゃんは君に一目惚れでした。前の飼い主さんが飼いきれなくなって、行き場に困っているという状況もありました。お母ちゃんはしぶしぶ君を飼うことを受け入れました。
春のある日、君は水色のお洋服を着て現れました。黒く垂れた耳、まん丸の瞳、鼻筋とシッポの先が白くて、四本の足もソックスをはいたように白でした。麻布生まれ、黒ラブとポインターのミックスのお洒落な君は、お母ちゃんのハートも一目でわしづかみにしました。だけどあまのじゃくのお母ちゃんは、「散歩とか誰がやるの?大変なのが来ちゃったよ」と憎まれ口をたたきました。君は不安だったよね。ごめんね。案の定、仕事が忙しいお父ちゃんより、お母ちゃんが君のお世話係でした。夜は2~3時間おきにトイレに起こされたっけ。
朝がやけに早くて、5時半にはお母ちゃんにジャンピングボディーアタックをかまして起こしてきたっけ。
散歩が何より大好きで、小金井公園を爆走したっけ。
やんちゃで好奇心旺盛で、飼い始めの3ヶ月は君に完全に振り回されたよ。軽い育児ノイローゼ~
だけど、一緒にいる時間が重なっていくと、もう可愛くて可愛くてたまらなかった。
君はぐんぐん大きくなって、飛び付くとお母ちゃんの肩を越すまでになった。でも、大きい赤ちゃんで、重たい身体で抱っこをせがんだりしたよね。
いつも世話しているのはお母ちゃんなのに、何故か軽く見られていて、お父ちゃんの言うことの方をよくきいたっけ。
一緒に車で旅行もした。小金井の阿波おどりも見に行った。桜祭りにも乱入した。スタジオにも、お父ちゃんの道場にも入ったことがあったね。
お客さんが来ると大喜びで飛びはねて、皆を驚かせたね。
いつでも存在感たっぷりだったから、君がいなくなっちゃうと、本当にポッカリと穴が空いてしまったようです。