運命

人は、実は自分で選択してることはとても少なく、向こうからやってきた運命の中で生きている場合が殆んどだ、というニュアンスの言葉を聞きました。
確かに、何の因果か、今の時代に生まれてきたのも私の運命でしょうし、今に至る様々な進路は私の意思で決めてきたようだけど、その時の環境や状況、受け入れる側、そこで知り合った人々によって、如何様にも変化した可能性があるな、と思いました。ここにいるべくしているのかな。又々ハリーねたで申し訳ないのですが、ハリーとも、小金井に住んでいなければ会えなかったし。
人との出会いも又然りで、日本に生まれて、そこで知り合った人も、何かしらのご縁があって、巡り会ったんだなあ、と思いまして。今更ながら一期一会とはいい言葉だし、重い言葉だと思いました。ハリーが亡くなってしまったことは、悲しく苦しいことで、まだ感謝する気持ちまで昇華できません。が、全犬、全人口を考えると、天文学的確率で我が家にやってきて、楽しい日々を送らせてくれたことは、奇跡に近くて、やはり感謝せずにはいられません。出会うべくして出会ったのかな。
そんな思いでこの世を見渡してみると、いろいろなことに寛容になれる気がします。
まぁ、私は聖人君子ではないので、このような気持ちは一過性で、又すぐ日常に飲み込まれてキリキリしてゆくのでしょう。
ですが、ハリーの死は、私の中の意識のスイッチを変えました。そういう激しい衝撃がないと感知出来ない鈍い自分が残念ですが。

ハリーへ 2

元気が無くなってから2週間で君は逝ってしまった。あんなに元気に野川を走っていたのに、信じられないよ。やっぱり環境の変化が悪かったのかな、独りぼっちでお留守番してる時間が長かったからかな、ちゃんとしつけをしなかったから、拾い食いし過ぎたからかな、お父ちゃんとお母ちゃんは、仕方ないことだとわかっていても、自分たちを責めずにはいられませんでした。後悔の涙は尽きることなく、苦しくてたまりませんでした。
お花に囲まれて眠るかのように安らぐハリー。たくさんの人が君の死を悼んでくれたね。ハリーは太く短く熱く生きたから幸せ者だと言われたよ。そうだといいんだけど。
お父ちゃんお母ちゃんは、自分たちの気持ちにケジメをつけるため、君を手厚く弔うことにしました。府中にある慈恵院を見に行きました。そこは緑に囲まれた静かで清々しいお寺で、沢山の動物たちが眠っていました。親バカ、大袈裟かもしれないけど、ここで、君の葬儀を行うことを決めました。
今日、お坊さんの読経の中、君の実体と最期のお別れをしました。涙が止まらなくなりました。
だけどね、お父ちゃんとお母ちゃんは奇跡を見たんだよ!君が火葬されている間、青い空に君が疾駆する姿そっくりの雲があらわれたんだよ!お父ちゃんお母ちゃんは涙を流しながらその姿を眺めました。ハリー、お別れの挨拶に来てくれたんだね。
実体を失って、苦しかった病もなくなって、自由に空を駆けられるんだね。喜んでいるように見えたよ。
ハリーは白いお骨になりました。
ざわざわしていた気持ちがすぅーっと落ち着きました。
本堂で読経をしてもらいました。
私たちも清々しい気持ちに満たされてゆきました。
君の不在は、ことあるごとに私を悲しくさせる。だけど実体はないけど、魂がいつもいつでも側にいることを感じました。私たちには葬儀は必要な儀式でした。
ハリーは沢山のことを教えてくれたね。何でもない平凡な日常の繰り返しの中にこそ、素敵で幸せなことがあるんだね。
お母ちゃんは生きてることに傲慢だったと思うよ。
君が身をもって教えてくれたことを、お母ちゃんは心に刻んで生きていきます。
ずぅーっと一緒だよ、ハリー!

ハリーへ 1

ハリーへ
君が我が家にやって来たのは8年前の春でした。猫のレオと、ひなとの共同生活に満足していたお母ちゃんは、犬を飼うことには消極的でした。毎日の散歩や、家を留守にしにくいなど、猫よりも重責だと考えていたからです。が、何よりお父ちゃんは君に一目惚れでした。前の飼い主さんが飼いきれなくなって、行き場に困っているという状況もありました。お母ちゃんはしぶしぶ君を飼うことを受け入れました。
春のある日、君は水色のお洋服を着て現れました。黒く垂れた耳、まん丸の瞳、鼻筋とシッポの先が白くて、四本の足もソックスをはいたように白でした。麻布生まれ、黒ラブとポインターのミックスのお洒落な君は、お母ちゃんのハートも一目でわしづかみにしました。だけどあまのじゃくのお母ちゃんは、「散歩とか誰がやるの?大変なのが来ちゃったよ」と憎まれ口をたたきました。君は不安だったよね。ごめんね。案の定、仕事が忙しいお父ちゃんより、お母ちゃんが君のお世話係でした。夜は2~3時間おきにトイレに起こされたっけ。
朝がやけに早くて、5時半にはお母ちゃんにジャンピングボディーアタックをかまして起こしてきたっけ。
散歩が何より大好きで、小金井公園を爆走したっけ。
やんちゃで好奇心旺盛で、飼い始めの3ヶ月は君に完全に振り回されたよ。軽い育児ノイローゼ~
だけど、一緒にいる時間が重なっていくと、もう可愛くて可愛くてたまらなかった。
君はぐんぐん大きくなって、飛び付くとお母ちゃんの肩を越すまでになった。でも、大きい赤ちゃんで、重たい身体で抱っこをせがんだりしたよね。
いつも世話しているのはお母ちゃんなのに、何故か軽く見られていて、お父ちゃんの言うことの方をよくきいたっけ。
一緒に車で旅行もした。小金井の阿波おどりも見に行った。桜祭りにも乱入した。スタジオにも、お父ちゃんの道場にも入ったことがあったね。
お客さんが来ると大喜びで飛びはねて、皆を驚かせたね。
いつでも存在感たっぷりだったから、君がいなくなっちゃうと、本当にポッカリと穴が空いてしまったようです。